自身の過去作を中途半端には終わらせないと言う執筆姿勢は嬉しいですね
レビュー日:2006-11-17 評価:★★★★☆
13年ぶりに再会された『孔雀王』の第2巻。中断されていた『孔雀王退魔聖伝』の続編にあたります。
己の出身母体である裏高野を天津神達によって滅ぼされた主人公・孔雀が、神をも滅ぼす事が出来る力を持つ武器「スサノオの牙」を求めて旅を続けている場面で中断された『退魔聖伝』を引き継ぐ形で再開された作品ですが、第1巻のあとがきにも記されていたように、『退魔聖伝』を知らない読者でも楽しめる作品作りも視野にいれているとの事で、キャラクターや設定がかなり変更されており、『曲神紀』から入っても楽しめる様なつくりにはなっています。
今巻では、前巻でさわり程度に登場した曲神についての解説がなされ、『曲神紀』における基本的な設定が示されています。勿論まだまだ情報は小出しにされている段階であり、この先にどんなとんでもない展開が待ち受けているのか、過去作における設定のエスカレートっぷりを体験している者にとっては楽しみなところですね。
その上、天津神に国を追われ、彼等に敵対していた日本の土着神である国津神や、第3勢力と位置付けられていた人犬一族等も再登場しています。『退魔聖伝』の中では登場するだけ登場して、しっかりとした掘り下げがなされていなかったキャラクター達が、新たな設定の下でちゃんと描写されているのはファンとしては嬉しい所。こういった自分の投げたボールにちゃんと責任をとろうとする著者・荻野真氏の執筆姿勢は高く評価出来ると思います。
ただ、過去作を受け継いだ内容であるだけに、全くの新規読者には少々辛い部分があるのも事実。今作品を真に楽しむには、やはり『退魔聖伝』の内容くらいは把握している必要がありますね。非常に広範囲から集められた参考文献や取材を基に、そこに独自の解釈も交えて練られている設定の面白さが荻野作品の真骨頂だと考えていますが、それだけに今作からだけでは汲み取れない部分もかなり大きいと感じられます。